就職 活動 サイトを記録に残すなら
構造改革がいわれるなかにあって、雇用の流動化や雇用形態の多様化が指摘されている。
平成長期不況のなかで、正社員は減少をつづけ、アウトソーシング(業務の外部委託)が進み、パートタイマー、派遣労働者などが増加しつづけている。
他方、正社員はといえば、リストラで雇用不安の毎日である。
社員のほうでも企業の存続に不安をもっていて、希望退職募集は日常化し、会社が募集すると少しでも有利なうちにと希望者が殺到することもまれではなくなってきた。
企業も中長期的視野にたって従業員を育成する余裕を失いつつあるようにみえる。
このような現状をみれば、今後は「非正社員」の時代ではないかという疑問が出るのも当然かもしれない。
派遣社員や有期雇用など「正社員」でない雇用が増加しているだけでなく、雇用ではない働き方、たとえばSOHO(小規模・在宅オフィス)をもつフリーランサー(いわゆるフリーの記者やデザイナー等)が持てはやされている。
また、労働市場の規制緩和が語られることが多く、なかには職業紹介機能の自由化など正当な主張もあるが、なんでも規制緩和すればよいというような単純な主張も少なくない。
ところが、正社員についての議論はおどろくほど少ない。
わずかに均等処遇の問題でパートタイマーから短時間正社員へという議論が出始めた程度にすぎない。
最近のマスコミミの論調でも、正社員はがんばらねば、担当している業務を外部委託されたり、非正規従業員や派遣社員に取って代わられたりするという記事ばかりが目に付く。
にもかかわらず、本書ではこれからは「正社員」の時代として考えるべきだと主張する。
若干減少しているとはいえ、雇用労働者の圧倒的多数が正社員であることは依然としてまちがいない。
また、日本経済を中核として支えているのも正社員たちである。
失業率の高まりという問題はあるにせよ、日本が先進国であり続け、世界的にみれば高い生活水準を維持できているのは、働く人たちの仕事に対する高い能力とモラール(士気、勤労意欲)があればこそである。
その財産を捨てては途上国に逆戻りしてしまうだろう。
もちろん、従来の働き方が問題を多く抱えていることも確かである。
たとえば、転勤・単身赴任のように家族生活を維持しにくくする働き方が日常化してすでにかなりの時がすぎている。
個人生活や家族生活に過重な負担をもたらす正社員という働き方を、できればやめたいという人は少なくない。
とはいえ、アルバイトやパートタイマー、派遣労働者で家族を形成し、子供を育てることはかなり困難である。
雇用の安定性についても賃金水準においても。
はじめにこの本で私がまず描こうとするのは、「正社員」「社員」という働き方あるいは雇用関係の意味である。
私たちは正社員を「正規」の社員とし、その他を「非正規」とする。
「非正規」社員と正社員の賃金格差を批判する論があるが、それは「非正規」の働き方で正社員の処遇を要求するというのにとどまるのが通例である。
しかし、仕事と処遇は基本的には強くむすびついている。
正社員の仕事能力やキャリアは、非正規社員や派遣労働者のそれとは異なるのだ。
だから、正社員のいない企業は成長できない。
コア人材を十分に養成あるいは獲得できない企業は、存続できない。
次に描こうとするのが、個人にとって、画一的な正社員像が一面ではかなり息苦しくなっていること、しかし他面、派遣社員などの働き方はあまりにも不安定であること、この状況をいかに解決すべきかということである。
本書ではこれからの働き方として「多様な正社員」というモデルを提案する。
とんでもないと思われるかもしれない。
しかし、それは企業と個人、そして社会にとっての折り合いのつけ方としては有望なのである。
現在の「正社員像」が息苦しくなっていることを示す。
つづく働時間の問題をとりあげる。
わが国の「残業割増」がフィクションであり、実は「割引労働」となっていること、それによって残業の日常化が起こっているという事実を指摘するとともに、どのような条件で子育てができるのかを検討する。
従来の日本の正社員像の中心をなす、長期安定雇用、年功賃金、昇進競争の現状について分析するとともに、近年どのような変化が起こっているのか、あるいは起こっていないのかについて、明らかにする。
なぜ多様な「雇用形態」ではなく多様な「正社員」でなければならないのかを、能力開発、キャリアとの観点から検討する。
そこでは、近年の企業存続への不安が、専門職制度の実質化を可能としつつあることを指摘するとともに、高まる失業の不安に対処するための能力開発の視点を提示する。
正社員ルネサンス雇用形態の多様化が進んでいる。
正社員は減タし、その他の雇用形態の人々が増えている。
派遣労働者は増え、パートタイマーは増え、在宅勤務は増え、契約社異は増え、ただただ正社員が減少するとされている。
これはたしかに事実である。
本音の主級は正社員が不動の重要性をもっているという点にあるが、この主張を展開する前に、これらの多様な就業や多様な雇用形態の増加傾向について、確絶しておくことが必要であろう。
就業形態の多様化は起こっていない世の中では、派遣社員、有期雇用、パートタイマー、契約社員、SOHO、在宅勤務など、「従来型」とは異なる多様な雇用形態あるいは就業形態が増えてきており、この傾向は今後ますます進展するだろうといわれている(1)。
それによって、人々の生き方に対応した仕事の仕方ができるのだというのが、大方の議論である。
私はこれに異論を唱える。
なるほど、先にあげたような雇用形態が増えているのは事実である。
しかし、量的にそれは限られたものであり、もっと重要なことは質的に決して望ましいものとはいえない。
このような雇用形態や就業形態で多数の人々が豊かに、自分の生き方と折り合いをつけた仕事ができるとは思えないのである。
働いて収入を得るのは、何もサラリーマソ(雇用者)だけではない。
起業して自分の店をもつことでもよいし、規模を拡大して経営者になってもよい。
さらに、フリーのデザイナーや記者、写真家などいわゆるフリーラソサーになるもよし、弁護士や開業医など「サムライ系」の仕事をすることだってある。
こういう人たちは、統計上は「自営業主」に区分される。
こうした人たちは増えているのだろうか。
統計をみると、マスコミ自営業主は増えていない。
ますます雇用者が増えてを含めた数字しか読み取れないが、自営業主、家族従業者ともに減少していることがわかる。
就業形態の多様化は、雇用形態の多様化以外に、雇用以外の就業形態の増加、具体的には非農林自営業(農家などを除く自営業者)の増加として理解されることが多い。
こういう人たちは本当に増えているのであろうか。
毎年データのとれる『労働力調査』でみたのである。
農林業の自営業主や家族従業者が減少しているのはもちろん、非農林自営業主と家族従業者も一九九〇年ごろから急激に減少している。
こうした傾向には、近年の廃業の急増が関係している。
世の中で起業家が持てはやされているにもかかわらず、実際には開業は増えていない。
『中小企業自書』によれば、農業などの一次産業を除く開業率(3)はいわゆるITブームのなかで一九九六年から一九九九年にかけて若干回復し、一九八九年から一九九一年のレベルの四・一%まで持ち直した(図表1-3)。
しかし、廃業率はそれをはるかに上回っており、実に五・九%に跳ね上がっている。
起業による雇用創出は期待を裏切っている。
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